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自然界のリズムと生体のリズム その1

黄帝内経(こうていだいけい)という有名な大昔の中国の書物がありますが、その中に「天人相応」という言葉があります。

 

大自然の構造は、電子顕微鏡で観るようなミクロの世界から、電波望遠鏡で観るようなマクロの世界まで、全て同じ法則の元に成り立っています。上に位置する「天」と下に位置する「地」の間にいるのが「人」です。天は「陽」で地は「陰」、陰陽のバランスがとれている中間に位置するのが「人間」です。そして「人間」の内側にもまた、天と地(上と下)右と左、前と後ろ内と外の陰陽があり、常にそのバランスを保っています。

 

天地は常に回り巡っているので、昼と夜が毎日繰り返されます。更に4つの季節が巡って一年になり、60回繰り返すと元の位置に戻ります。これを「還暦」といいます。

 

このように大自然には周期(リズム)があり、自然界にある物は、全てこれに従わなければなりません。故に生き物には、それぞれが生きるために最適化されたリズムが存在します。

 

地球上の生物が備え持っている計時機構は、1972年アメリカの科学者がラットの左右の視神経が交叉する部位にある事を発見しました。

 

その後、人にも体内時計がある事が発見され、その機能が解き明されつつあり、時計遺伝子というものが時計蛋白の生合成を介してリズムを調整している事が分かっています。

 

リズムの役割は、統制です。単細胞生物でも活動や増殖時には固有のリズムがあります。特に人間のように60兆を超す多細胞生物は、内臓や皮膚など身体の各部分を構成する組織ごとに、寿命は異なり、それぞれのタイミングで分裂・増殖・破壊が制御されています。

 

現在、人の体内には300以上のリズムがある事が証明されています。全身60兆の細胞達は、それぞれの組織に属し、役割を持ちつつ再生と崩壊を繰り返します。細胞自身が周期リズムによってその秩序が保たれています。脳、心臓、肺などの臓器も、それぞれの機能に独自の周期リズムと基本のリズムが同期しているそうです。

 

このようなリズムの内で、最も重要なものは24時間±4時間の周期を持つサーカディアンリズム(概日リズム)です。これは地球上の自然環境が繰り返される大元の周期、つまり一昼夜に一致したリズムで、大多数の生物の基本リズムです。

 

何らかの原因で、自然界のリズムと生体のリズムが同期出来なくなる環境に長期間置かれると、細胞の新陳代謝を含め様々なリズムが乱れ、秩序を失ってしまいます。身体の内部の環境がどんどん悪化してゆくと、正常な細胞は生き延びることが困難になってしまいます。するとこの無秩序な環境に生体が適応してしまい、その環境でも生き延びる細胞が必要となってきます。

 

何らかの原因とは、その人に因りけりですが、結果として双方のリズムの調和を妨げてしまう要素として、物理的・身体的・精神的なストレスが考えられます。

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