中医学とは
中医学とは、数千年という長い歴史に裏付けられた、生理学、病理学、薬学などの理論と臨床経験に基づく中国の伝統医学です。中国古代哲学の影響を受けた基礎理論と、数千年にわたる膨大な臨床経験によって成り立ちます。
その特徴は「病気と人をみる医学」である点です。人間を内臓や臓器、器官のような部位の集まりとしてみるのではなく、それぞれが互いに関係し合い、まとまりをもった個体と考え、一人ひとりの異なる体質、発病の原因と経過を分析する方法も特徴的です。
そして何よりも病気になる前の“未病”(わずかな不調がある病気の前の段階)から病気に進ませない、これからの時代に最も必要とされる予防医学でもあるのです。
漢方では「証」と「気・血・水」が重要
中医学では、「気」「血」「水」の三要素で構成されているとする考えがあります。
「気」は、やる気・気力などの言葉からもイメージできるように生命の活動となるエネルギーで、「血」は血液中の血球成分を、「水」は血清・リンパ液・唾液など体内にある液体を指します。この「気・血・水」の量が足りない状態を虚証と言い、流れが滞っている状態を実証を言います。漢方では一人ひとりの病態だけでなく、体質を重んじて漢方薬が処方されるのです。
気•血•水の乱れと不調の関係
「気・血・水」は、不調の原因を探るためのものさしです。
漢方では、私たちの体は「気・血・水」の3つの要素が体内をうまく巡ることによって、健康が維持されていて、これらが不足したり、滞ったり、偏ったりしたときに、不調や病気、障害が起きてくると考えられています。
そのため、診察で「気・血・水」の状態を診て、どこに問題があるのかを探っていきます。
「証」の分け方「虚」と「実」
「証」とは、分かりやすくいうと、「その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわすもの」です。本人が訴える症状や、体格などの要素から判別します。そして漢方ではその「証」に合った漢方薬が処方されます。「証」の分け方のひとつに「虚・実(きょ・じつ)」があります。
体力や抵抗力が充実している人を「実証(じっしょう)」、体力がなく、弱々しい感じの人を「虚証(きょしょう)」と言います。
症状が同じでも、治療方法は人それぞれ
病気や局所的な症状を見るのではなく体全体を観察し情報を集めます。集めた情報を統合、分析し診断と証(弁証)が導かれ、それにのっとり処方が決まります(論治)。この方法を弁証論治といいます。
具体的には四診で得られた情報をもとに、それぞれの物差し(弁証)を使い分けながら体内の陰陽、虚実、寒熱、五臓、気血、津液の状態を見て正しい対処法を導き出します。