薬食同源、裏を返せば「毒食同源」その②
2018年11月02日
中国伝統医学でいう「薬」とは、四気五味の性質が特に優れている物のことで、例えば暑さ寒さの天候ストレスで弱ってしまった人の免疫力や、再生能力を元に戻す働きを持つ物を指します。食品には「薬」程の効果は出なくても同じ様な働きをするものが数多くあります。
暑くて汗をかき過ぎてバテバテで肩がコリコリの人には、冷性で酸味・苦味・甘味の物(トマト・胡瓜・西瓜など)に塩少々を振りかけたものが最適です。しかし、夏でも冷房の効いた部屋に長時間過ごし、肩がコリコリで頭痛がする人に同じ物を食べさせると…。多分拒否されると思いますが… 戻したり下痢したりと益々症状が悪化してしまいます。
昨今のスーパーでは、季節に関係なく一年中夏や冬の食品が売られています。南国の果物はほとんどが身体を冷やします。もしも冷え性の人が、冬に野外でスイカを食べれば、冷えに冷えを重ねてしまい、大変な事になってしまいます。逆に暑がりの人が、夏に身体を温めるニラやニンニクの入った餃子に辛いラー油をかけて食べたり、酒類と激辛の物を大量に摂ったりすれば、熱がこもって熱中症の様な状態になることもあります。
このように、その人の体質や状況において適切な食品を、適切な量を摂れば、それは「薬」と同様に有用なものとなりますし、体質や状況において不適切な食品を摂ったり不適切な量を摂った時には「毒」にもなりうる事があります。
例えばの話ですが、南国の沖縄で暮らす方が食べていて健康状態が良いという物でも、北国で暮らす方には、そのままでは無理があります。この場合は温性のネギや生姜を適量加えることで、食品の冷性を平性に換える事が出来ます。このように調理することで「毒」が「薬」に変わります。
また、季節や自分の体質に合った食事をしていても、味付けの濃淡で食欲が変わります。
中でも塩分は、薄いものよりも少し濃い目の方が、素材の旨味を引き出しますので、特に外食系では多く使いがちになります。
一般的に、塩の摂りすぎは腎臓に良くないと云われていますが、それよりも注意が必要なのは、塩分が多い食品は、胃が温められて動きやすくなると云うことです。
旨味があって胃が動けば、当然食欲も増進するので、食べ過ぎの習慣がつきやすくなります。さらに口中の塩味を緩和させようとして、甘味や水分摂取が増えてゆくと、これが糖尿病の入り口になることもありますので、塩分が多くなりすぎないようにご注意下さい。
余談になりますが、五味(酸味・苦味・甘味・辛味・塩味)は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の働きに関係しています。調子が良い時には、空腹の時口の中に味を感じることはありません。
ところが、五臓の気、いずれかに不足があったり疲弊している時には、口中にその味を感じる事がありますので、お心当たりの方は御養生下さい。